2013年03月12日

労働安全衛生法

労働安全衛生法と労働基準法の関係はどうなっていますか。

質問 「労働安全衛生法は、もともと労働基準法にあった安全衛生に関する規定を独立させて、一つの法律にしたものだと聞きました。労働安全衛生法は労働基準法とどのような関係にあるのか、また労働基準法と比較してどのような特徴があるのか教えてください。」
回答
ポイント
労働安全衛生法(以下「労安衛法」)は、もともと労働基準法(以下「労基法」)にあった内容を独立させて拡充した法規なので、労基法とは密接な関係があります。
ただし、制定後の改正やその法規定のあり方などから、労基法とはかなり異なる部分があることも確かです。
解説
制定当初の労基法は、第5章として安全衛生に関する諸規定を設け、危害の防止、有害物の製造禁止、危険業務の就業制限、安全衛生教育、健康診断などに関する規定を置いていました。しかし、産業の発展や技術の進歩に伴い、新しい労働災害の危険が増大し、これに対応するための労働安全衛生規則の改定が追い付かない状態となります。そのため、従来の労働安全衛生体制を抜本的に見直して、独立した安全衛生法規を制定することが議論されるようになりました。このような状況を受けて昭和47年6月に労安衛法が成立し、同年10月から施行されたのです。
しかし、労働安全衛生に関する規制が独立した法律になったからといって、労基法との関連性が完全に断ち切られたわけではありません。労基法42条は労働者の安全衛生に関する規制を労安衛法に委ねることを定め、また、労安衛法1条も「この法律は、労働基準法と相まって…職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と定めています。すなわち、労安衛法と労基法は両者の密接な関連を前提としており、労安衛法の規定は労基法に定める労働条件の一部を構成しているのです。
このように、労安衛法は、原則として労基法と一体として考えるべき内容を基本としています。しかし、他方で、労安衛法には、労基法から修正または充実された点や、新たに付け加えられた特徴など、独自の内容も少なくありません。
まず、労基法がもっぱら労働条件の最低基準を罰則付きで強制することを目的とするのに対して、労安衛法は、労災防止のための安全衛生の確保だけでなく、快適な職場環境の促進をも重要な目的として掲げています。つまり、労安衛法は、単に安全衛生の最低基準を確保するだけでなく、より進んで適切なレベルの職場環境を実現することをも目指しているのです。この点は、労基法と比べたときの労安衛法の重要な特徴の一つでしょう。
また、労基法の規定の名宛人は「使用者」です。同法にいう使用者とは「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」と定められています(労基法10条)。事業主とは労働契約の一方の当事者である事業主体であり、個人事業であればその事業主、法人たる会社であれば会社(法人)そのものが使用者となります。労基法は、使用者の概念を事業主以外にも拡大し、現場で実際に労基法の遵守義務を負う立場にある者をも使用者とし、法的責任を負わせているのです。これに対して、労安衛法では、その主たる義務主体は「事業者」であり、法人(会社)であれば法人が、個人企業であれば事業主を指します。労安衛法では、事業経営の主体と労安衛法上の責任主体とを一体化しているのです。
そして、労安衛法では、事業者以外にも様々な主体が義務を課されていることにも注意すべきです。これは、労働の場において生じる様々な労働災害を適格に防止するためには、そのために最も適当な者に最も適切な措置を講じさせることが必要だからです。例えば、統括安全衛生責任者をはじめとする各種の安全衛生の責任者が直接的な義務を課されていますし、労働者自身も義務を課されることがあります(→8-Q1参照)。
さらに、労働者に事業場における安全衛生対策について発言する場を保障するために、安全委員会や衛星委員会など労働者参加の仕組みが積極的に取り入れられていることも、労安衛法の特徴の一つです(→8-Q1参照)。
労基法と労安衛法の違いは、その規制の手法にもあります。労基法は、ほとんどの規定に罰則が付いており、それを担保として労基法上の義務の履行を図っています。これに対し、労安衛法は、労基法よりもはるかに柔軟な手法を用いてその内容の実現を図っています。例えば、事業主等に最低基準の遵守義務を超えて労働災害防止の努力義務を課した(労安衛法3条)上で、厚生労働大臣による危険防止措置に関する技術上の指針の公表とそれに基づく指導(労安衛法28条)、事業者に対する安全衛生計画の作成の指示(労安衛法78条)や安全衛生コンサルタントによる診断・指導(労安衛法80条)といった、事業者の自主的な取り組みに対する助力や政策誘導措置を重視していることが、その表れです。
なお、このような規範内容の特徴から、労安衛法には、労基法13条のような労働契約に対する直立的効力を定める規定が存在しません。そのため、近年、労安衛法には労働契約を直接規制する効力は認められないという考え方も出てきています。しかし、労働者の安全および衛生に関する事項は就業規則の記載事項となっており(労基法89条)、就業規則の解釈基準として労安衛法が当然に機能するので、少なくとも、現実に大きな齟齬をきたすことはあまりないと考えられています。
posted by すず坊ちん at 10:36| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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